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鹿沼市の城 2「龍階城(鹿沼市引田)」

写真(1)-龍階城縄張り図(上が北)
龍階城縄張り図(上が北)

さて、第二回目は龍階城を紹介したい。
(りゅう)(がい)とは要害(ようがい)が変化したものと思われ、所謂城郭関連地名である。
写真(1)の図面は第1回目と同じく、緑色が堀、黄色が土塁、白抜きの所が人工の平地(城郭用語では(くる)()、郭などと呼ばれる)を表現している。
龍階城の歴史は定かではない。
近隣の金ヶ沢城と対峙する城と考える論考もあるが(※1)確証はない。
そのような歴史的には不明確な謎の城であるが、その山中に残る遺構は見事なまでに明確なのである。
まず、図面をご覧になっていただきたい。
最高峰「主郭」(=近世の本丸)を頂点として、緑色の線が何本も入っている事がおわかりになると思う。
繰り返しになるが、これらが城郭用語でいう「堀」である。
山をたくさんの「堀」で切り刻み、敵から城を守ろうとしている。
お城を趣味でやられている方は、当然ご存知だと思うが「堀」には色々な種類がある。
第2回は、この龍階城を題材に、実際の遺構写真をみていただき、「堀」の基本形を覚えて頂こうと思っている。

ところで、「堀」の種類もそうであるが、実は城郭用語というのは極めて曖昧で、残念ながら一本化されていないのが現状である。
研究者によって様々な用語が作られたり、同じ意味でも言い方が違っていたりする。(※2)
今回は大抵の人が引用し、使ってもおおよそ万人に通じる差し障りのない用語を選んで紹介していきたい。
まず、堀の模式図を下に載せてみよう。

写真(2)-堀の模式図
堀の模式図

写真(3)-堀切
堀切

模式図を見ていただければ、大体イメージが出来たと思うが、写真(3)は主郭北の“1の堀”である。
山の尾根の続きを断ち切るように配置される堀を「堀切(ほりぎり)」という。

写真(4)-二重堀切
二重堀切

写真は主郭西にある「二重堀切」である。
文字通り、堀切を二つ重ねたものを言う。
当然、三つのものは三重堀切となる。
極めて単純な発想であるが、堀を重ねることにより、圧倒的な防御力を産んでいる。

写真(5)-竪堀
竪堀

山の斜面を下る堀を「(たて)(ぼり)」という。
等高線に対し、ほぼ直角に走る堀と考えて良い。
写真(5)は写真(4)の二重堀切から続く「竪堀」である。
麓に達するほど長く続く竪堀である。
「竪堀」は敵が斜面を横に(等高線に沿って)移動することを防ぎ、敵の攻撃の広がりを防ぐ役割があると言われている。
竪堀がないと、敵兵は山の全方位から頂上部を目指すことができてしまうからだ。
「竪堀」を山の上から落とし、敵兵の横移動を規制化し、敵を集約させたところを上方から攻撃しようという狙いもある。
山の「斜面」を切り刻む堀と考えても良い。
龍階城の場合、この(5)の長い竪堀が一本あることによって、これから山を登り、城を攻めようとしている敵軍団を、麓から2分することができるのである。

写真(6)-横堀
横堀

竪堀と異なり、山城や丘陵上の城の場合、等高線に沿ってできた堀を「横堀」という。
当城では明確な物が見当たらないのであるが、該当しそうな場所は最東端の写真(6)、ここだけである。
今は埋まって、明確に堀と断言できないが、現地を観察して筆者は「横堀」の可能性があると判断している。
この堀の役割は、模式図を見ていただきたいが、城内兵と敵兵の距離を保つことである。
距離を保ち相手の直接攻撃を避け、逆に「横堀」に侵入した敵を城内側から迎撃できる。
敵兵の動きを、「点」ではなく、広く「線」で止める効果があるのだ。
 
さて、ここまで龍階城の遺構を用い「堀」について解説してきたが、イメージはお掴みになれたであろうか。
第三回以降も、お城用語を鹿沼の城で紹介する機会を設けたい。
 
最後に、筆者は城に関するホームページを開設している。
乱暴なホームページではあるが、興味のある方は是非ご覧いただきたい。
URLは、http://saichu.sakura.ne.jp/tochigitop.html
である。
 
写真(7)-城の位置(国土地理院地図)
城の位置(国土地理院地図)

(※1)
鹿沼市の城と館(鹿沼市業書7)2002年鹿沼市史へんさん委員会
(※2)
例で言うと、石垣の呼称である。
そもそも“石垣”なのか“石積み”なのかから始まり、石の積み方、技法、加工による呼称等、様々な言い方がある。
筆者もちゃんと説明できない。
ライター 縄張りくん

掲載日 令和3年5月25日 更新日 令和3年5月27日
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