鹿沼歴史探訪
人集うまち、鹿沼宿からの発展
北関東のほぼ中央、東京から100キロメートル圏に位置する鹿沼市は、東北縦貫自動車道を動脈とする県内物流の拠点となっています。
江戸時代、現在の鹿沼市の基礎となった鹿沼宿も、日光への交通の要衝として整備されてきました。
古峰ヶ原を含む前日光高原一帯は、日本古来の山岳信仰と仏教が結びついた「修験道」の道場とされてきました。奈良時代にこの地で修行を重ねた勝道上人が日光山を開きました。
さらに江戸時代、徳川家康を祀る東照宮が造営され、江戸と日光を結ぶ道が重要性を持つようになる中で、鹿沼の歴史は日光との深い関わりを持ちながら形作られてきました。また朝廷から日光への例幣使の街道の要所として、鹿沼宿は発展を遂げました。
日光西街道・例幣使街道を往来する人・物は、地場産業を発展させ、文化の向上をもたらしました。
当時、鹿沼の村々で生産された麻、朝鮮人参などの特産物は、江戸・大阪・京などの大都市へ出荷され、豊かな商品経済とともに文化が鹿沼の地に根付き始めました。彫刻屋台もこの頃つくられ、その精緻な彫物は現在にまで守り継がれています。
当時の最高学府・昌平黌(しょうへいこう)に学び、天明の大飢饉の際には宿場内の裕福な家や家庭に米や金の供出を呼びかけて貧民救済を行うなどの社会事業を施した鈴木石橋の存在なども、鹿沼宿の経済・文化の水準の高さを裏付ける一例といえるでしょう。
幕末には家数800件を超したといわれる大宿にまで発展した鹿沼宿を核に、明治の廃藩置県、市・町村制の施行などを経て、鹿沼は近代的な商工都市へと歩みを進めていきました。
鹿沼の中心的な産業である木工業は明治23年の日光線開通、26年の日光電力創設により電柱の需要が急増し、丸のこを使った水力製材機の開発などによってその礎が築かれました。
昭和23年鹿沼市は市制を施行、30年までに1市9村の合併を行い、現在の鹿沼市が誕生しました。39年の木工団地、44年の工業団地の完成などは、鹿沼市の発展の重要な基盤となっています。
また昭和47年の東北縦貫自動車鹿沼インターチェンジ開設は、現在の‘物流拠点・鹿沼’を生み出しました。
人が集まり、物が行き交う「にぎわいのまち・鹿沼」は、江戸時代の鹿沼宿のなごりを随所に残しながら今、21世紀の扉を開き、新しい時代への第一歩を踏み出していきます。
西暦 | 年号 | 時代 | 主な出来事 |
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旧石器時代から古墳時代 | 坂田山遺跡・稲荷塚遺跡 | ||
鹿島神社裏遺跡・糠塚遺跡・明神前遺跡 | |||
茂呂川西遺跡 | |||
狼塚古墳・段ノ浦古墳群・判官塚古墳(市指定文化財) | |||
767 | 神護景雲1年 | 奈良から平安時代 | 勝道上人、大剣峰(横根山)で修行の後、日光に四本竜寺を創建 |
782 | 延歴1年 | 勝道上人、男体山登頂 | |
878 | 元慶2年 | 賀蘇神に従五位下を授く(三代実録) | |
1210 | 承元4年 | 鎌倉時代 | 弁覚、23世日光山座主となる |
1218 | 建保6年 | 鉄造薬師如来坐像(上石川薬師堂・県指定文化財) | |
1251 | 建長3年 | 弁覚、押原御所にて没 | |
1283 | 弘安6年 | 板碑(阿弥陀三尊・磯町) | |
1292 | 正応5年 | 青銅灯篭(鹿沼権三郎・日光二荒山神社・国指定重要文化財) | |
1316 | 正和5年 | 犬飼(常行堂・三昧田) | |
1325 | 正中2年 | 板碑(阿弥陀・上久我・市指定文化財) | |
1336 | 建武3年 | 南北朝時代 | 太刀紅葉丸(備州長船住利行・今宮神社・市指定文化財) |
1343 | 興国4年 | 藤原藤房?遺品(見野長光寺・1767年出土) | |
1349 | 貞和5年 | 木造薬師如来坐像(大旦那藤原公綱・加園興源寺) | |
1364 | 貞治3年 | 磐裂神社鰐口(草久白井平) | |
1384 | 至徳1年 | 符所郷、衣服料不弁済(常行堂文書) | |
1419 | 応永26年 | 室町時代 | 符所郷洪水(常行堂文書) |
1474 | 文明6年 | 厳島明神棟札(板荷畑) | |
1491 | 延徳3年 | 戦国時代 | 鹿沼右衛門大夫教清、討死・川原田合戦(大永3年説あり) |
1508 | 永正5年 | 今宮権現・大般若経 | |
1509 | 永正6年 | 連歌師宗長、鹿沼館に泊まる | |
1523 | 大永3年 | 川原田合戦(延徳3年説あり) | |
1532 | 天文1年 | 壬生綱房、坂田山に築城(天文3年、今宮勧進) | |
1537 | 天文6年 | 石鐘(深岩観音境内・市指定文化財) | |
1551 | 天文20年 | 壬生徳雪斎周長、寄進状(佐八文書) | |
1559 | 永禄2年 | 今宮神社鰐口(壬生綱長・県指定文化財) | |
1571 | 元亀2年 | 壬生徳雪斎周長、発給書状(髙村文書・市指定文化財) | |
1573 | 天正1年 | 安土桃山時代 | 今宮神社大太鼓(伝西寺太鼓・胴内銘年代・市指定文化財) |
1576 | 4年 | 壬生徳雪斎周長、壬生綱雄殺害 | |
1587 | 15年 | 壬生義雄、今宮御殿上葺棟礼(押原推移録) | |
1589 | 17年 | 天満宮宮殿建立(昌淳・市指定文化財) | |
1590 | 18年 | 鹿沼城落城、壬生義雄、小田原で没 | |
1608 | 慶長13年 | 江戸時代 | 今宮権現再建 |
1681 | 延宝9年 | 今宮神社本殿改築(軸部墨書銘・県指定文化財) | |
1682 | 天和2年 | 木造千手観音菩薩立像(円空作・広済寺・市指定文化財) | |
1689 | 元禄2年 | 奥の細道・芭蕉、鹿沼に泊まる | |
1770 | 明和7年 | 木造愛染明王坐像厨子銘(幸慶作・正蔵院・県指定文化財) | |
1780 | 安永9年 | 今宮祭礼に万度・屋台でる(仲町文書) | |
木造薬師三尊像・十二神将像(木喰作・等持院・県指定文化財) | |||
1781 | 天明1年 | 鈴木石橋「麗澤の舎」開塾(遺稿、蔵書・市指定文化財) | |
1794 | 寛政6年 | 細川正義(初代)、宇都宮藩御用鍛冶となる(作刀・市指定文化財) | |
1817 | 文化14年 | 細川正義(二代)、津山藩刀工となる(作刀・市指定文化財) | |
1828 | 文政11年 | 荒川直行、今宮神社に刀奉納(市指定文化財) | |
1830 | 文政13年 | 山口安良、「押原推移録」刊行 | |
1836 | 天保7年 | 仲町屋台箱銘(彫工富田住後藤周二正秀) | |
1843 | 天保14年 | 高久靄厓、江戸にて没(作品・県、市指定文化財) | |
1849 | 嘉永2年 | 今宮神社唐門建造(県指定文化財) | |
1859 | 安政6年 | 野尻騒動 | |
1868 | 明治1年 | 明治・大正時代 | 農民騒動起こる |
1887 | 20年 | 下野麻紡織会社設立(同23年開業) | |
1889 | 22年 | 鹿沼町制施行 | |
1890 | 23年 | 日光線開通 | |
1893 | 26年 | 日光電力株式会社創立 | |
1903 | 36年 | 上都賀学館開校 | |
1915 | 大正4年 | 図書館開館 | |
1945 | 昭和20年 | 昭和時代 | 空襲により256戸焼失(泉町ほか4町) |
1948 | 23年 | 鹿沼市制施行 | |
1949 | 24年 | 市立図書館開館(今宮町) | |
1954 | 29年 | 1市7か村合併 | |
1955 | 30年 | 2か村合併 | |
1958 | 33年 | 市庁舎完成 | |
1960 | 35年 | 産業文化会館開館 | |
1968 | 43年 | 鹿沼市史前・後編発行 | |
1969 | 44年 | 中央公民館開館 | |
1972 | 47年 | 東北縦貫自動車道開通 | |
1984 | 59年 | 市民文化センター開館 | |
1989 | 平成1年 | 平成 | 市立図書館開館(睦町) |
1990 | 4年 | 川上澄生美術館開館・木のふるさと伝統工芸館開館 | |
1993 | 5年 | 仲町屋台公園屋台展示収蔵庫開館 | |
1998 | 10年 | 屋台のまち中央公園「屋台展示館」開館 | |
1999 | 11年 | 鹿沼市史資料編発刊開始 | |
2006 | 18年 | 粟野町と合併 |